英語圏のファッション系ユーチューバーの番組を観ていて知った言葉「Less is more」
訳すのが得意ではないが引き算の美学のこと指す言葉だ。振り返れば足し算を経て引き算で服を着て来た。
ある時はバルマカーンコートの上にフィッシングベストやハンティングベストを着たり、袖に刺繍のあるロンTの上にXLサイズ以上の半袖Tシャツを着ていた。
柄物を複数重ねながらバランスを取るスタイリングにチャレンジをしていた。足し算をする時に頭の中は混雑する駅のように騒がしい。
しかしその騒がしさに充実感を覚える。街を歩いていても、なんとなくリサイクルショップに入っても常にある種の挑戦の視点を持って脳内スタイリングを楽しんでいた。

ひょんなことからシンプルなスタイリング(もしかすると着こなしという言葉に近い感覚)をし始めた。
アメトラ老舗のトラウザーズに同じくアメトラを代表するアイコンが胸に刺繍されたストライプのボタンダウンを合わせる。
アイテムとしての質の高さを活かすために、素材の良さを引き出せるような着こなしを意識して、華やかさはバンダナやスカーフのような小物で演出。
このイメージから大きく離れない範囲で過ごす時間が続いた。身に着けるアイテム数を減らし、質の良いシンプルな服でまとめる。基礎にひたすら忠実に。

今は様々なメディアを見て足し算をしたい気持ちが高まっている。
でもそれは前回の足し算とは違う。同じ足し算でも「この足し算はしない」という引き算を事前にしているからである。
「選ばない」「着ない」「しない」ことは目につきにくいし気が付きにくい。しかしここにこそ固有の美的感覚が現れるのでは無いだろうか。
3月9日
Writer:kantasticmrfox